下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
安房地域医療センター
房総健康管理センター
センター長
神山剛一
水分や食事の影響
この記事の概要
排便には水分だけでなく、食事や食物繊維など便の材料となるものの摂取量が関係します。食べる量が少なければ便の貯留量も少なくなり、排便間隔が空くことがあります。下剤を考える前に、食事量、水分、食物繊維、便性状をあわせて確認します。
食事や生活、全身の病気が、排便に対してどのような影響を与えるのか見ていきましょう。
一般的に、水をたくさん飲めば便が出やすくなると思われがちです。たしかに脱水があれば、全身状態の悪化に加えて、便が硬くなり排便しにくくなる可能性があります。しかし、必要以上に水分を多く摂取したからといって、それだけで便秘が改善するわけではありません。便秘ケアでは、水分量だけでなく、食事量や便の材料が十分に確保されているかをあわせて確認することが大切です。
高齢者では、持病やADLの低下、食欲低下などにより、食事量そのものが少なくなることがあります。食べる量が少なければ、当然つくられる便の量も少なくなります。そのため、便がたまるまでに時間がかかり、排便間隔が空くことがあります。この状態を単純に「便秘」と考えて下剤を使用すると、便が十分にたまっていないところに薬が作用し、軟便や下痢、便失禁につながることがあります。便が出ないときには、まず「食べられているか」「便の材料があるか」を確認することが重要です。
では食物繊維はどうでしょう。食物繊維は、便の量を増やすだけでなく、便の性状を整える役割もあります。たとえばオオバコやアラビアゴムなどの水溶性食物繊維は、腸管内の水分を抱え込み、便をまとまりやすくする働きがあります。余分な水分が多いときには便を形づくり、便が硬くなりやすいときには水分を保つことで、便を出しやすい状態に近づけます。
下痢や軟便では便失禁が起こりやすくなりますが、食物繊維によって便の性状が整えば、便失禁の改善につながることがあります。つまり食事内容の工夫は、便秘だけでなく、軟便や便失禁のケアにも関係します。排便コントロールでは、「出た・出ない」だけでなく、ブリストルスケールを用いて便の形を確認し、食事量、水分量、食物繊維の摂取状況をあわせて見直すことが大切です。
POINT 水分と食事
- 水分不足は全身状態や便性状に影響するが、水分を増やすだけで便秘が改善するとは限らない
- 食事量が少ないと、便の材料が不足し、排便間隔が空くことがある
- 食物繊維は便の量を増やすだけでなく、便性状を整える働きがある
- 軟便や下痢による便失禁にも、食事内容や食物繊維の調整が関係する
- 便が出ないときは、下剤の前に食事量、水分量、便性状を確認する
update : 2026.09.04