下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
経管栄養や中心静脈管理と排便ケア
医療法人社団俊和会 寺田病院 神山剛一
さて、経管栄養を受けている人、あるいは絶食状態で点滴を受けられている方たちの排便は、どのように管理すればいいのでしょうか。
これも決して確立した方法があるわけではありません。通常は定期的に下剤を用いるパターンが多いのではないかと思われますが、何らかの根拠があって行われているのではなく、あくまで慣習的に行われているだけです。そもそも、便の元となる食事をしていないので、定期的に排便を促す利点は必ずしもないのです。実際に1カ月以上排便がなくても健康被害のない人は存在します。
とは言え、食事をしていないにもかかわらず毎日便が出る人もいます。これは経管栄養の内容によっては食物残渣となるものが含まれているからです。
また脱落した腸管上皮が老廃物として排泄されることもあります。従って中心静脈栄養で、まったく食事をしてなくても、排便が見られる人もいます。
いずれにせよ、一定期間排便がないからといって慌てる必要はありません。大腸に便がある状態というのは決して非生理的な状態ではなく、便の量がどれぐらい貯まれば健康に害を及ぼすのか、どのぐらいの期間停滞していたら問題なのかは、実のところ明確な指標はないのです。便の貯まり方がそれぞれのケースで異なる以上、どのぐらいの量の便を出すべきかは個々の症例で異なるはずです。
管理する側にとっては定期的に排便が有る方が安心かもしれませんが、下剤の弊害も考慮すべきです。むやみに下剤を使用することで腸管内圧の上昇を招き、局所における循環不全をきたすこともあります。また下痢便が誘発されれば失禁となる確率も高くなります。ですから本来の排便管理は個別に行われるべきものなのです。
POINT 経管栄養や中心静脈管理
- 定期的に下剤を用いる必要はない
- 可能なら腹部レントゲン撮影で、便の貯留を確認
- 直腸内診を行う
- 聴診にて腹鳴を確認
- 腹囲をはかる
- 腹部の触診にて便塊を触れる