下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
安房地域医療センター
房総健康管理センター
センター長
神山剛一
経管栄養や中心静脈管理と排便ケア
この記事の概要
経管栄養や中心静脈栄養では、通常食の方とは便の量や排便間隔が異なります。排便がない日数だけで判断せず、腹部膨満、腹痛、嘔吐、排ガス、便性状、栄養の内容、全身状態をあわせて確認することが重要です。
経管栄養を受けている方、あるいは絶食状態で点滴を受けている方たちの排便は、どのように管理すればよいのでしょうか。
経管栄養や中心静脈栄養の方に対する排便管理には、決まった方法が確立しているわけではありません。現場では、一定期間排便がないと定期的に下剤を使用することがありますが、それが必ずしも本人にとって必要とは限りません。食事の摂り方や栄養の内容が変われば、つくられる便の量や性状、排便間隔も通常の食事をしている方とは異なります。
そもそも、便の材料となる食事量が少なければ、便がたまるまでに時間がかかります。中心静脈栄養でほとんど食事をしていない場合には、定期的にまとまった排便を促す利点は必ずしも大きくありません。一方で、経管栄養では栄養剤の種類や含まれる成分によって、便のもととなる残渣が生じることがあります。また、食事をしていなくても、脱落した腸管上皮などが老廃物として排泄されるため、少量の排便がみられることもあります。
そのため、一定期間排便がないからといって、それだけで慌てる必要はありません。大切なのは、「何日出ていないか」だけで判断するのではなく、腹部膨満、腹痛、吐き気や嘔吐、排ガスの有無、便の性状、栄養剤の注入状況、全身状態の変化などをあわせて確認することです。便がたまっているかどうか、下剤や浣腸が必要かどうかは、個々の状態に応じて判断する必要があります。
管理する側にとっては、定期的に排便がある方が安心かもしれません。しかし、便が十分にたまっていない状態で下剤を使用すると、腹痛や下痢を誘発したり、軟便による便失禁につながることがあります。特にADLの低い方では、下痢便が出ることでおむつ内の便失禁が増え、ご本人の不快感や皮膚トラブル、介護負担につながることもあります。排便管理は、定期的に出すことを目的にするのではなく、その方の栄養状態、腹部の状態、便性状を見ながら個別に組み立てることが重要です。
POINT 経管栄養や中心静脈管理
- 食事や栄養の入り方が変われば、便の量や排便間隔も変わる
- 一定期間排便がないだけで、自動的に下剤を使用する必要はない
- 腹部膨満、腹痛、嘔吐、排ガス、全身状態の変化を確認する
- 便の貯留が疑われる場合は、医療職が腹部診察、直腸診、腹部レントゲンなどで確認する
- 下剤使用後の軟便や下痢、便失禁にも注意する
- 排便管理は、排便回数ではなく、本人の状態に合わせて個別に考える
update : 2026.09.04