下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
アセスメントのための考え方
医療法人社団俊和会 寺田病院 神山剛一
排便日誌では、下剤や排便の記録をしていきますが、それ以外に排便に影響を及ぼすものとしては、全身状態や生活環境があります。ですから排便コントロールをするに当たっては、排便日誌を用いた薬と便性のコントロールだけでなく、患者さんの生活環境や行動パターンのアセスメントも必要です。とは言うものの、アセスメントの対象が多すぎると、具体的に何をどうやって評価すればいいか分からなくなってしまいます。
この混乱を避けるためには、排便への影響を4段階に分けて眺めるとよいでしょう。例えば、食べたものが便になるまでの行程を消化管機能とします。そして直腸で便を貯めて、貯まった便を押し出すはたらきは直腸肛門機能と言います。これ以外の要因として、患者さんがどのような疾患を患っているかがあります。それによって、排便に影響する薬を内服している場合もあるでしょうし、疾患そのもの影響で便秘になる可能性もあります。これを全身疾患による排便への影響と分類します。さらに、患者さんの家庭環境や生活パターンも排便に無関係ではありません。例えば、脳血管障害後遺症で不全麻痺の見られる患者さんでは、廊下やトイレに手摺りを加えただけで、排便が自立できることだってあります。多忙で食事を摂るのが不規則であったり、便意をもよおしてもすぐにトイレに行けない生活を繰り返せば、身体の障害がなくとも便通のリズムは乱れてしまいます。環境要因は、間接的ながらあらゆる患者さんに排便障害を起こします。
以上をまとめると排便障害の要因は大きく4つに分類できます。直腸肛門機能障害は便が貯められなかったり、うまく出せなかったり、直接的な排便障害の原因になります。これに対し消化管機能障害は便が形づくられなかったり、下痢になったり、便の形状に影響しつつ、排便障害の原因となります。つまり、直腸肛門機能はダイレクトに排便障害に影響を及ぼしますが、消化管機能のはたらきによって制御できます。或いは、全身疾患の影響は消化管機能に影響を及ぼす一方で、環境要因によってサポートできるものもあります。
この図式は排便障害の原因となる4つの要因が、隣り合った要因は間接的に影響し合っていることを表しています。排便障害をアセスメントする際には、患者さんを取り巻くあらゆる要因を評価する必要があり、多くの情報で混乱しないためにも、この図式を用いて情報を整理することをお勧めします。