高齢者の排尿の特徴と尿失禁
尿失禁の原因、症状と分類
「尿失禁」とは病名というより、さまざまな機能障がいによって、トイレでうまく排尿できなくなった症状のことをいいます。
排尿機能の性差
尿は腎臓でつくられ、尿管を通って、膀胱に蓄えられますが、腎臓、尿管、膀胱には構造的な性差はありません。性差は、尿道の長さと尿道まわりの構造にあります。女性の尿道は3~4cmと短く、まっすぐです。一方、男性の尿道は16~20cmと長く、しかも途中で2カ所折れ曲がっています。また、尿道の開閉をつかさどる骨盤底の筋肉群も男性の場合は女性より強力で、男性は前立腺が尿道のまわりを取り囲んでいます。
加齢に伴って、一般的に、女性は尿道の位置の変形や骨盤底の筋肉群の機能低下が起こりやすく、腹圧がかかった時の尿もれや、トイレまで我慢がきかない尿もれが起こりやすくなります。男性の場合は、加齢に伴って前立腺が肥大化する傾向があります。前立腺が肥大化すると尿道を狭窄し、尿が出にくくなることがあります。また、男性の場合、尿道がたるんで、折れ曲がった尿道球部のところに尿が残り、排尿後に無意識に垂れたりすることもあります。
排尿の異常
排尿の異常には、尿失禁だけでなく、頻尿、おしっこが出づらい、残尿感がある、いつもおしっこがしたいような違和感、蓄尿時や排尿時の痛み、神経障がいによる尿意の鈍磨など、さまざまな症状があります。
それらの原因となる排尿機能の障がいには、大きく分けると「蓄尿障がい」と「排出障がい」のふたつがあります。我慢できないでもれてしまうのが「蓄尿障がい」による尿もれ、尿を出し切れなくて膀胱から尿があふれてもれてしまうのが「排出障がい」による尿もれです。
排尿機能の障がい
蓄尿障がい(我慢できないでもれる)
膀胱機能
- 過活動膀胱(膀胱が勝手に収縮する):排尿筋過活動、排尿筋不安定、排尿筋過反射
- 膀胱弾力性の低下
- 膀胱容量の萎縮
尿道機能
- 不全(尿道がゆるい):尿道括約筋不全、尿道過活動
排出障がい(出し切れないでもれる)
膀胱機能
- 無収縮(膀胱が収縮しない)
- 排尿筋低活動
尿道機能
- 閉塞(尿道が開かない):前立腺肥大症
その他
下部尿路系障がい以外の尿漏れ
蓄尿・排出機能に障がいはないものの、運動機能に障がいがあったり、認知症などが原因でトイレでうまく排尿できないためにもれてしまうこともあります。
尿失禁のタイプと症状
腹圧性尿失禁
重い物を持ち上げたり、咳やくしゃみなどによる腹圧の上昇で起こる尿失禁。主に尿道や尿道まわりに異常があり、膀胱の過活動はない。
切迫性尿失禁
強い尿意切迫感とともに、尿をこらえきれずにもらしてしまう。不随意の膀胱収縮を伴う。
混合型尿失禁
「腹圧性尿失禁」と「切迫性尿失禁」の混合型。
溢流(いつりゅう)性尿失禁
排出障がいが基礎疾患としてあり、尿閉状態となり尿が溢れる状態。
機能性尿失禁
運動機能の障がいや、認知症などのためにトイレに間に合わない、あるいはトイレが分からない、排泄行為が認識できないなどの理由で起きる。