下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
安房地域医療センター
房総健康管理センター
センター長
神山剛一
骨盤底筋訓練とバイオフィードバック療法
この記事の概要
骨盤底筋は、便を我慢する力だけでなく、排便時に肛門周囲をゆるめる働きにも関係します。訓練では締める力と力を抜く感覚を意識し、より専門的な治療としてバイオフィードバック療法があります。介護現場では足底接地や前かがみ姿勢など排便しやすい環境づくりも大切です。
骨盤底筋とは、文字通り骨盤を底から支える筋肉群で、肛門括約筋や肛門挙筋などで構成されます。骨盤底筋は排尿や排便に関わっており、便やガスを我慢する、便を出すときに肛門周囲をゆるめる、といった働きに関係します。そのため、骨盤底筋の働きが低下すると便失禁につながることがあり、一方で排便時にうまくゆるめられないと、便が直腸まで来ているのに出しにくい状態になることがあります。
骨盤底筋訓練は、これらの筋肉を意識しながら、肛門を締めたり、ゆるめたりする練習です。訓練には、肛門を瞬間的に締める、数秒間持続して締める、締めたあとに力を抜く、姿勢を変えて行うなど、いくつかの方法があります。目的は単に筋力を強くすることだけではありません。肛門周囲の筋肉の場所や動かし方を意識し、便を我慢するときには締め、排便するときにはゆるめるという、排泄に適した使い方を身につけることが大切です。
一方、バイオフィードバック療法とは、骨盤底筋の活動を確認しながら行う訓練です。たとえば肛門に圧力計などを用いて、締める力や力の抜き方を画面上で確認しながら練習します。自分では締めているつもりでも十分に締められていなかったり、排便時に力を抜いているつもりでもかえって力が入っていたりすることがあります。バイオフィードバック療法では、こうした筋肉の使い方を視覚的に確認しながら修正していきます。
ただし、介護現場では専門的な機器を用いた訓練を行うことは多くありません。実際のケアでは、排便しやすい姿勢を整えることも重要です。足底を床や台にしっかりつける、やや前かがみになる、手すりや肘置きで体を支える、急かさず落ち着いて排便できる環境を整えるなどの工夫によって、腹圧をかけやすくし、肛門周囲の力を抜きやすくなります。骨盤底筋の働きは、筋力だけでなく、姿勢や安心感、排便のタイミングにも影響されます。
骨盤底筋訓練やバイオフィードバック療法によって、すべての排便障がいが大きく改善するわけではありません。しかし、薬剤や手術のような副作用や身体的負担が少なく、便失禁や排便困難に対して検討しやすい方法です。介護スタッフは、訓練そのものを無理に行うのではなく、便が漏れやすい、便意はあるのに出しにくい、いきんでも出ない、残便感が強いといった様子を観察し、必要に応じて医療職やリハビリ職と連携することが大切です。
POINT 骨盤底筋訓練
- 骨盤底筋は、便を我慢する力と排便時にゆるめる働きの両方に関係する
- 訓練では、肛門を締めるだけでなく、力を抜く感覚も意識する
- 便失禁だけでなく、便が直腸まで来ているのに出しにくい場合にも関係する
- 介護現場では、足底接地、前かがみ姿勢、手すりの使用など排便しやすい姿勢を整える
- 改善には時間がかかるため、無理なく継続し、医療職やリハビリ職と連携する
update : 2026.09.04