排泄ケア研究所 活動報告
第34回 日本介護福祉学会大会 (2026年9月5日・6日)
グローバル排泄ケア研究所 参加レポート
2026年10月16日
ユニ・チャーム株式会社は、『介護施設におけるおむつ交換方法の違いによる介護者の腰部負荷の比較検討』について、筋骨格解析システムを用いた定量的評価の結果を演題発表いたしました。介護者の腰部負荷の比較検討は、和田親宗先生(九州工業大学 教授)、中野聡太先生(九州看護福祉大学 教授)の協力のもと実施しています。おむつ交換時の介護者の腰部負荷に関する研究成果を発表する良い機会となりました。
*演題発表の概要
1. 研究目的
高齢者介護において排泄介助は介護者の腰痛発症に直結する高負荷動作である。おむつ交換の負担評価は主観評価や角度測定が多く、全身運動を三次元的かつ内部骨格への負荷として定量化した研究は少ない。
被介護者の立位が不安定になると排泄介助はベッド上へ移行し、介護者負担が激増する。一方、トイレ排泄支援リフトは立位保持機能を補完し、立位困難者も安全なトイレ誘導を可能にする。そこで本研究では立位保持困難者を想定し、「ベッド上でのテープ型」と「トイレ排泄支援リフトを用いたトイレでのパンツ型」のおむつ交換2手法について、筋骨格シミュレータを用いて介護者の腰部負荷を算出・比較し、リフト導入による身体負担軽減効果を定量的に検証することを目的とする。
2. 研究方法
慣性センサ式モーションキャプチャシステム「Perception Neuron(Noitom社)」を用い、介護者役協力者(成人男性1名、以下、介護者)が被介護者役協力者(成人女性1名、以下、被介護者)に対して行うおむつ交換動作を計測した。介護者の全身17カ所に慣性センサを設置し、各動作3試行からデータ欠損のない1試行を解析した。解析には、筋骨格シミュレータ「AnyBody Modeling System(AnyBody Technology社)」を用い、介護者の第4腰椎と第5腰椎間(以下、L4-L5)の椎間板圧縮力(N)を算出した。
おむつ交換は「インナーパッドのみ交換」と「アウターとインナーパッド両方の交換(以下、両方交換)」の2パターンとした。それぞれのパターンをベッド上(以下、ベッド上交換)と、トイレ排泄支援リフト「Hug(Fuji社)」使用下(以下、リフト交換)で実施した。なお、アウターはベッド上交換ではテープ型おむつ、リフト交換ではパンツ型おむつを用いた。
L4-L5椎間板圧縮力の「平均値」、作業時間と平均値を乗じた「積算値」を求め、ベッド上交換を基準(100)として指数化し比較した。
3. 研究結果
L4-L5椎間板圧縮力についてベッド上交換を基準(100)として指数化した結果、リフト交換は「インナーパッドのみ交換」では平均値が91、積算値が40であった。一方、「両方交換」では平均値が90、積算値が89であった。
4. 考察
L4-L5椎間板圧縮力は「インナーパッドのみ交換」と「両方交換」の双方でリフト交換の負荷が小さかった。特に「インナーパッドのみ交換」の積算値において顕著であった。この要因として、持続的な前傾姿勢による脊柱起立筋群への応力集中の抑制と交換動作の複雑さによる作業時間延長の抑制が考えられる。一方「両方交換」で積算値が微減にとどまった要因は、リフト交換ではパンツ型おむつ装着時に足通しのため一度リフトを外す必要があり、交換時間が変わらなかったためと推測される。
一般的にインナーパッド交換は1日4回程度と頻回なのに対し、両方交換は1日1回程度と頻度が低い。よって、発生頻度の高いインナーパッド交換で、リフト活用による積算値の約6割低減は、介護者の総負担抑制に大きな効果がある。本研究では手先への外部負荷は考慮外としたが、ベッド上交換では体位変換を伴うため実負担はさらに増大すると予測される。以上より、トイレ排泄支援リフトの活用は、頻回なパッド交換における腰部負荷を抑え、介護者の身体的負担軽減に寄与する可能性が示唆された。しかし、本研究は単一被験者による予備的検討であり、結果の一般化にはさらなる検証が必要である。
演題発表の様子
*参加者からの質問
Q. 演題発表では、ベッド上での交換に、テープタイプを使用し、トイレでの交換にパンツタイプを使用していましたが、なぜ、ベッド上での交換にもパンツタイプを使用して、比較条件をそろえなかったのですか?
A. 今回の検証では、実際の介護現場で多い交換場面を想定して、比較検証を行っています。
Q. トイレ排泄支援リフトは、おむつ業界として推奨しているのか?
A. ユニ・チャームとして、歩くのが難しくなってもトイレ排便をあきらめないでほしいという想いから紹介をしています。トイレ排泄支援リフトは、移動・移乗の動作に加えて、ズボンや、おむつの着脱が、簡便になるリフトを紹介しています。
Q. 腰痛予防でベッドの高さは、どのように設定するのが良いですか?
A. ベッドの高さは、まっすぐ立った状態で手の平がマットの高さと同じくらいになるように調整することを推奨しています。
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ユニ・チャーム株式会社 グローバル排泄ケア研究所
2000年設立。全国の施設・病院で排泄ケアの実態調査などを行いながら、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士など社外専門家との共同研究活動も展開。
また、排泄ケアの知識や技術を広く社会に普及するため、学校や地域での啓発活動も実施している。