排泄ケア研究所 活動報告
第28回 日本褥瘡学会学術集会 (2026年9月4日・5日)
グローバル排泄ケア研究所 参加レポート
2026年10月13日
グローバル排泄ケア研究所は、学術的発展とケアの質向上を目指し、第28回 日本褥瘡学会学術集会にてランチョンセミナーの開催およびホスピタリティルームでの企業展示を行いました。変わりゆく排泄ケアおよびスキンケアの最新知見やソリューションを提案し、現場の課題に寄り添う有意義な機会となりました。
*セミナー概要
『変わりゆく新発想の排泄ケア ~質の高いスキンケアと簡単・時短・継続性の両立を目指す~』
- 座長:溝上 祐子 先生(東京医療保健大学 教授)
- 講師:平良 亮介 先生(水島協同病院 皮膚・排泄ケア特定認定看護師)
症例から紐解く失禁関連皮膚炎(IAD)と褥瘡の発症機序
失禁関連皮膚炎(IAD)が存在する場合、仙骨部褥瘡のリスクが約4.6倍高まることが指摘されています。セミナーでは、仙骨部褥瘡を生じた高齢患者の症例が紹介されました。家族の負担軽減や排泄物汚染の防止を目的に尿道留置カテーテルが挿入されたものの、その後患者は敗血症を発症し、CRP(C反応性蛋白)値が44.8に達する重篤な状態に陥りました。感染症や侵襲性、QOL低下のリスクのある尿道留置カテーテルに過度に依存しないケアの重要性を再考させられる症例となりました。
医学データベースの文献においては、比較対照研究による因果関係の証明が不十分であり、「尿が直接的に褥瘡を悪化させる」という強固なエビデンスは現時点では確認されていません。
しかし、セミナー内で行ったリアルタイムアンケート(参加者約350名)では、以下のような認識のギャップが浮き彫りになりました。
- 約66.4%が「仙骨部褥瘡がある場合はカテーテルを挿入すべき」と回答
- 約95%が「尿が褥瘡を悪化させる」と考えており、主な要因として「湿潤」を挙げた
これに対し平良先生からは、「尿そのものが直接的な原因というよりも、尿によって引き起こされるアンモニアの発生、皮膚pHのアルカリ化、細菌増殖といった一連の環境変化が、褥瘡悪化や感染リスクを高めるのではないか」という仮説が提示されました。
さらに、自己抜去の既往があるため、膀胱留置カテーテルが再挿入できない患者に対し、高機能パッドを活用する試験的ケアの症例も報告されました。カテーテル管理を排した環境下でも褥瘡は悪化せず適切なケアが継続できたことから、適切な道具の活用が「カテーテルに依存しない褥瘡管理」の有効な選択肢となり得ることが示唆されました。
また、夜間の排泄ケアにおいては、「汚れた状態で夜を過ごさせたくない」という看護・介護側の心理的抵抗感に対し、夜間に何度も排泄交換で起こすよりも、高い吸収力を持つ製品を使用して朝までまとまった睡眠を確保する方が、特に認知症患者においては環境変化による混乱を防ぎ、適切なケアにつながるという「視点の転換」についても議論されました。
平良先生は、今回得られた知識や知見を各施設の臨床現場で活用し、今後も褥瘡ケアおよび排泄ケアの質向上を目指すよう呼びかけ、セミナーを締めくくりました。
*ホスピタリティルーム概要
ホスピタリティルームでは、ユニ・チャームの新製品の紹介のほか、リフトメーカー5社様のご協力のもと、トイレ排泄支援をスムーズに行う「トイレ排泄支援リフト(スタンディングリフト)」の紹介・体験会を実施しました。
*協力メーカー・機種一覧(五十音順):
- アイ・ソネックス株式会社 様(スカイリフト)
- 株式会社いうら 様(ONBU)
- シーマン株式会社 様(テイクオフ)
- 株式会社FUJI 様(Hug)
- ラックヘルスケア株式会社 様(ライザーベース)
※5機種あわせ延べ890名の方が試乗体験されました。
人力による抱え上げ移乗は、介護者の指先が患者の身体に食い込み、過度な圧力や摩擦を引き起こす要因となります。リフトを活用して「点」ではなく「面」で身体を支えることで、脆弱な皮膚を守り、移乗時の事故リスクを低減させることができます。また、トイレでしっかり排泄することは、皮膚の排泄物汚染リスクを最小限に抑えることにもつながります。ユニ・チャームでは企業の垣根を越えて、スタンディングリフトの普及・啓発活動を推進しています。
ホスピタリティールームでのユニ・チャームの新製品案内
*参加者からの質疑応答(Q&A)
Q. 臨床検証で「モレ」を評価されたとのことですが、対照品と比較して具体的にどのような数値変化が見られたのでしょうか?
A. 平良先生のご所属病院にて、『ライフリー 一晩中安心さらさらパッド SkinCondition コンフォートナイト』(試験品)を含む3製品を用いて、モレや角層水分量などの臨床比較研究を実施しました。モレ率においては、試験品が9.6%となり、対照品1(15.6%)および対照品2(17.8%)と比較して低い値を記録しました。使用後評価においても、約8割のスタッフからポジティブな評価を得ています。
※対象品はいずれも自社製品
〇学術集会で紹介した『ライフリー 一晩中安心さらさらパッド SkinCondition コンフォートナイト』
Q. 陰部洗浄において「業務の時短につながった」とのことですが、具体的にどのような手順が省略されたのでしょうか?また、手技の標準化は容易でしたか?
A. 従来のボディソープを使用した洗浄方法と比較し、以下の工程が省略できます。
- お湯の準備、洗浄ボトルの準備・洗浄・乾燥、洗浄時の「すすぎ」工程
すすぎ不要となることでシーツ濡れのリスクや心配がなくなる点もメリットです。手順・工程が非常にシンプルであるため、スタッフ間での手技の徹底や標準化もスムーズに行えます。
〇学術集会で紹介した『ライフリー おしり洗浄フォーム SkinCondition』
Q. リフトの導入により様々なメリットがあったと伺いましたが、具体的にはどのような効果がありましたか?
A. 平良先生の病院では、2020年当時に1.54%であった褥瘡発生率を、昨年には0.57%まで低減させることに成功しました。この成果の背景には、全病棟でのエアマットのレンタル導入や、褥瘡予防対策委員会を通じたスタッフ教育の徹底が挙げられます。また、トイレ排泄支援リフトの導入には初期投資が必要となりますが、スタッフの腰痛予防およびそれに伴う休職防止の観点から、病院経営や労働環境維持において長期的に非常に大きなメリットがあると説明されました。
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◎ お問合せ
ユニ・チャーム株式会社 グローバル排泄ケア研究所
2000年設立。全国の施設・病院で排泄ケアの実態調査などを行いながら、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士など社外専門家との共同研究活動も展開。
また、排泄ケアの知識や技術を広く社会に普及するため、学校や地域での啓発活動も実施している。