排泄学エキスパーツ取材
暑い季節は肌を健やかな状態に保つスキンケアが大切
山梨大学大学院総合研究部医学域
健康・生活支援看護学講座 准教授
谷口珠実 先生
発汗がスキントラブルリスクの一因に
おむつ使用高齢者はスキントラブルのリスクが非常に高い方々です。加齢変化によって肌が乾燥しやすくバリア機能が低下しがちなうえに、失禁によって尿や便など排泄物の刺激があるためです。そこに、暑くなる季節にはさらに発汗が加わります。失禁と発汗による過剰な浸潤環境では、肌が「浸軟」し傷つきやすい状態となり、ますますスキントラブルが起こりやすくなっています。
そのため、この季節はトラブルが起こらないようにしっかりとスキンケアを行うことが大切です。洗浄で排泄物をきれいに取り除いたあと、加齢で不足しがちな水分を補って、最後に肌を刺激から守るために保護をしましょう。保護は補った水分を肌に閉じ込める役割も果たします。このスキンケアの3つのポイント(図1)を着実に行うことで、肌が健康な状態に保たれ、スキントラブルの予防に繋がります。「洗浄」「保湿」「保護」を同時にできる洗浄液も製品化されていますから、活用してみるのもよいでしょう。
スキンケアはやさしく丁寧に
汚れを落とす際に注意することは力を入れて擦らないことです。肌を傷つけないよう、ご自分の顔を洗うときのように優しく洗い流しましょう。また、洗う範囲もとても重要です。排便がなくても、1日に1回は陰部や肛門周囲だけでなく臀部全体を洗浄しましょう。
洗い方でスキントラブルの予防にかなりの差が出たという調査結果があります(図2)。洗い方のテキスト(図3) を作成したので、手技の確認にお役立てください。
適切なスキンケアを続けると、高齢者の肌の状態は目に見えて改善しますし、環境内にこもりがちなニオイも軽減されます。成果を確認できることで、スタッフの意欲も高まるでしょう。おむつ周りだけでなく、例えば掻痒感がある方には「全身のスキンケアも見直してみようか」など、良循環が生まれケア全体の質の向上に発展していきます。
スキンケアは「相手にやさしく接する」ケアの本質に結び付く良いケアですね。皆さん、是非取り組んでみてください。
谷口珠実
山梨大学大学院総合研究部医学域
健康・生活支援看護学講座 准教授。
大学院は排泄看護学を担当。皮膚排泄ケア認定看護師(WOC Nurse) 養成課程 排尿ケア領域の講義と実習指導などを担当。「日本創傷・オストミー・失禁管理学会」理事、学術(失禁)教育委員長、「日本老年泌尿器科学会」理事、「排尿機能学会」評議委員ほか、「NPO 法人日本コンチネンス協会」教育制度委員などを務めている。
こちらの記事は、ユニ・チャームが病院・施設向けに配布している『ライフリーいきいき通信 2016年夏号』に掲載している内容です。