排泄ケア研究所 活動報告
第24回 日本褥瘡学会学術集会 ハンズオンセミナーレポート
「するっとスッキリ便秘ケア」 ~便秘・下痢の根本的な解決に向けたアプローチについて考える~
2022年11月18日
今日、紙おむつ使用者の“便”を起因とするIADやモレの発生は医療、介護の現場では見過ごせない大きな課題となっています。
ユニ・チャーム株式会社排泄ケア研究所では、排泄ケアにおいて、排便ケアとスキンケアは決して切り離しては考えられないテーマであることを多くの医療専門職の方々に知っていただくために、2022年8月27日 第24回日本褥瘡学会学術集会(於パシフィコ横浜)において『するっとスッキリ便秘ケア~便秘、下痢の根本的な解決に向けたアプローチについて考える~』をテーマに、医療法人社団俊和会 寺田病院 排便機能外来担当医 神山剛一先生を講師にお迎えして、ハンズオンセミナーを開催しました。
下痢便とスキントラブルの関係
下痢便は腸液がそのまま排出されるPH高い強いアルカリ性のまま排出される。アルカリ性の強い便が肌に付着すると、皮膚へのダメージも大きくなる。
有形便は乳酸菌などの働きにより、下痢便に比べてアルカリが低く酸性に傾いており、刺激が低い。また、下痢便は大腸で水分を吸収できていない状況でもあり、決して良い状態とは言えないため、有形便を出すケアは、腸の働きにもお肌にも理想的。
第24回 日本褥瘡学会学術集会 ハンズオンセミナー
排便のプロセスの正しい理解とブリストルスケールの活用が、便秘の根本的な解決につながる
便が出ない原因は本当に便秘なのかを見極める
- 「便秘→下剤→下痢を繰り返す」
下痢=水様便の排出、便秘=便の停滞であり、便が出ない状態は便の停滞とは限らない - 下痢の排出は大腸がほぼ空っぽの状態といえる
- 下痢の後に、便が貯まって次に排便が起こるまで数日かかるのは当然のこと
- 単に、下痢を繰り返している可能性もある
*Point
ブリストルスケールで何番の便が何日おきに出ているのかを確認し、便が貯まっているかどうかを見極めることが大事
- ブリストルスケールについて詳しく知る↓ ↓
- https://www.carenavi.jp/ja/jissen/ben_care/shouka/shouka_03.html
排便のプロセスー便秘・下痢はなぜ起こるのかー
- インプット:食物繊維と発酵食品を摂取すること
便の材料となる食物繊維と発酵食品をしっかりと摂取できているか - トランジット:食物の消化や便が移動すること消化酵素の分泌や腸の蠕動運動が伴っているか
ブリストルスケール(腸の通過時間と便の性状を表す世界標準スケール)を使って確認する - アウトレット:便の検知機能、排出機能、トイレへの移動機能
直腸の部分に便が到達し、肛門から便を排出する力があるか
*3つの排便のプロセスに基づくアプローチが基本
- 便秘を想起させる症状(排便が無い、回数が少ない、膨満感、残便感など)があるだけで、便秘(便が停滞している)とは限らない
- どんなケアでも、実施後はブリストルスケールを用いて、便がしっかり貯まっていたのか、すぐに出てきたのかを判定しケアを評価する
上手な下剤の使い方とは
適切な量を適切なタイミングで使うことが大切
*Point
- ブリストルスケール
便が柔らかい6番~7番:下剤の量を減らす
便が硬い1番~2番:下剤を増やす - 毎日排便がない:投与の間隔を空ける、便が貯まっているタイミングで下剤を投与する
- 刺激性下剤や上皮機能変容薬は微調整が可能
- 浸透圧性下剤と併用して下剤の量を増やす方法も検討する
- 下剤を使用して排出された便は、必ずブリストルスケールで状態を確認し、タイミングが合っていたかを確認する
下剤はイレウスの予防になる?!
- 術後多く見られる癒着性イレウスは小腸の通過障がいであり、大腸に作用する下剤に予防効果は無い
- 宿便性イレウス、宿便性腹膜炎などは便秘が必ずしも原因ではない
- 腹部膨満感と便の貯留は比例しない
- 便が貯まって症状があるのか、便が貯まってないのに症状があるのかをしっかり区別することが重要
排便ケアについてもっと知りたい!
神山先生監修 『排泄ケアナビ』 排便ケアコンテンツ
◎ 申込み・お問合せ
ユニ・チャーム株式会社 排泄ケア研究所
grp-haisetsucare@unicharm.com
ユニ・チャーム排泄ケア研究所
2000年設立。全国の施設・病院で排泄ケアの実態調査などを行いながら、医師、看護師、介護福祉士、理学療法士など社外専門家との共同研究活動も展開。
また、排泄ケアの知識や技術を広く社会に普及するため、学校や地域での啓発活動も実施している。