排泄ケアの考え方
自立排泄の重要性
生活機能回復への支援
ユニ・チャーム排泄ケア研究所
寝たきりの状態で24時間おむつに排泄している高齢者のおむつをどのように外し、トイレやポータブルトイレでの自立排泄を支援していくのか、そのアセスメントを展開していくためには、「おむつ使用」と「おむつ外し」を定義する必要があります。 私たちは、おむつ使用を「1日24時間おむつに排泄させ、すべてのおむつ交換をベッド上で行っているケア」と定義しています。そして、「おむつを外す」ということは、「(1)すべてのおむつ交換をベッド上で行わない。(2)すべての排泄をおむつにさせない」ケアを段階的に進めていくことだと考えます。ベッド上でのおむつ交換は欠かせない業務であるかもしれませんが、それは排泄物の処理作業であって、本来の排泄ケアとはいえません。排泄ケアとは、それぞれの利用者の残存能力に応じた排泄のスタイルを見つけ出し、それを提供するための実践的な活動です。
特別養護老人ホーム、老人保健施設等の介護保険適応施設の場合、まず、おむつをはかされて入所してきた高齢者が「なぜ、おむつを使っているのか、その理由」をアセスメントすることが基本となります。私たちは、国際生活機能分類(ICF)をスケールに、以下の4象限で、「なぜおむつなのか」をアセスメントするように提案しています。
排泄に必要な生活機能を「できること(プラス因子)」と「できなくなってしまったこと(マイナス因子)」で象限別に、分類、整理します。
- 生活歴、生活様式、生活意欲
個人因子と環境因子の分類、既往歴・現病歴の治療、投薬の評価等 - 運動機能
関節と骨の機能、筋の機能の分類、ポータブルトイレ移乗のための座位保持機能、トイレ誘導のためのつかまり立ち機能の分類等 - 排泄機能
尿意、膀胱容量、排尿回数、残尿量、膀胱の活動性による排尿機能評価。便意、便秘、下痢による排便機能評価。投薬の影響等 - 認知機能
見当識、周辺症状(BPSD)、コミュニケーション機能の評価
例えば、夜間に転倒するのは、いつもトイレ周りという高齢者の行動が観察されたとします。この行為を「転倒・骨折」のリスクとして、運動機能の象限でマイナス因子ととらえるか、「トイレに行こうとする自立への意思」として、生活意欲の象限でプラス因子として評価するかで、支援計画はまったく違うものになります。生活意欲としてプラス因子でアセスメントすれば、トイレ周りで転倒する原因を考察することになります。トイレでの方向転換に問題があるとすれば、理学療法士と連携して、方向転換の機能訓練が短期の目標に設定できます。利用者のプラス因子を促進し、マイナス因子を克服していくために、生活機能分類から目標を導き出すことができます。また、医療職と介護職の連携、専門職によるチームアプローチの必要性も生活機能分類からみえてきます。
寄稿:船津 良夫(1998年~2017年 ユニ・チャーム排泄ケア研究所 主席研究員)