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前向きな排泄ケア

ユニ・チャーム排泄ケア研究所

母親や父親が、急性の疾患で入院し、治療を受け、2~3ヶ月後に退院してきたら、後遺症や障害を抱えた状態で、療養生活を強いられることになってしまったというケースもあると思います。病院から退院してきたら、おむつをあてられて、1日24時間おむつで排泄し、ベッド上でおむつ交換されることが習慣になってしまった。入院前は、軽い介助で、トイレに行けたのに…。こうした高齢者を在宅に迎え、どのようにして生活機能を取り戻してもらうのか、生活リハビリテーションの大きな課題を家族は背負うことになります。どうしたら、介護を前向きな気持ちで捉えていくことができるのでしょう。

生活リハビリテーションのポイントは、生活する力の基礎を取り戻すことです。それは、よく食べて、いいうんちとおしっこが出て、よく眠ることです。子どもを育ててきたときと同じです。この3つの生命力が子どもの健康の証だったはずです。高齢者の場合もその力が回復すれば、笑うこともできるようになるでしょうし、外出して友達に合ってみたいと思うようにもなります。この「前向きな気持ち」があれば、つらいリハビリテーションにも耐えられるようになっていきます。「前向きな気持ち」は本人だけの問題ではなく、介護する家族や在宅介護を支援する立場にある介護職の共通のテーマでもあります。感謝の気持ちをもち、明るく笑顔で介護を受け入れてくれる高齢者とそうでない高齢者では、精神的・肉体的介護負担がぜんぜん違います。人はひとりでは生きられません。どんなに体が衰えても、人と交流したいという気持ちは残っているはずです。この、外出したい、人と交流したい、社会参加したいという動機付けを支援することが大切です。トイレでの排泄は人間が社会に参加していくためのルールです。「トイレが使えるようになる」ことが生活機能回復の原点といえます。自立排泄は社会復帰を果すための手段です。「外出できるようになったら、どこに行きたいですか?誰に会いたいですか?」高齢者本人と介護者が「外出できるようになった姿」を共有することです。「外出できるようになったら、一緒に新幹線に乗って、お父さんのお墓参りに行きましょう。」そのためには、「トイレが使えるようにならなくては…」と、高齢者と介護者が共通の目標をもつことから、自立排泄への支援は始まります。「失敗したっていいんです。これを使ってトイレに行ってみましょう。」紙パンツやパッドは、本人と介護者に勇気と安心を与えてくれます。排泄ケアの最初のアプローチは、「おむつ交換の場所を変える」ことです。ベッドでの交換から、ベッドサイドでの交換へ、そして、トイレでの交換へと進めていきます。夜は無理でも、昼間は、ヘルパーさんの手を借りながら、おむつ交換の場所を変えてみましょう。

1.ポータブルトイレ移乗の支援

人はベッドに寝たきりでも、片方の肘の力を使って上体を起こすことができるはずです。もし上体が起き上がらなくても、介助の手を借りて、起き上がり、ベッドに座ること(端座位)ができるようになれば、ベッドの横においたポータブルトイレが使えるようになります。たとえ、ベッドの介助バーを使ってつかまり立ちができなくても、ベッド上で下着をおろし、ベッドでの端座位から立ち上がりを介助すれば、ポータブルトイレに移乗させることができると思います。パッドは便座に座った姿勢で交換します。介助でポータブルトイレへの移乗ができるようになれば、たとえ、便座に座ったときに排泄がなくても、1日に10分間でも便座に座る習慣を続けることに意味があります。便座に座った姿勢は排泄に最も適した姿勢です。足を床につけ、つま先に重心を移せば、いきむことができるようになります。排泄機能を復活させる刺激を与え、排泄の自覚を呼び戻すことができるかもしれません。排泄障害を抱える高齢者にとって、社会復帰への第1歩を踏み出したことを意味します。

2.トイレ誘導の支援

(介助の手を借りても)座った姿勢(端座位)がとれるようになれば、車椅子での移動が可能になります。車椅子でトイレまで移動できるようになったら、次に、介助で立ち上がり、トイレの介助バーにつかまり立ちができる訓練をします。人は片足だけを使えばつかまり立ちができます。20~30秒の間つかまり立ちができるようになれば、ズボンとパンツの上げ下ろしの介助ができます。たとえ、便座に座って排泄することができなくても、座った姿勢でパッドを交換し、つかまり立ちでパンツとズボンの上げ下ろしができるようになれば、トイレが使えます。「トイレを使う」ということの意義は、トイレで排泄することだけではなく、トイレでパッドを交換することも含まれると思います。トイレで排泄する機能を完全に取り戻すことができなくても、安心してパッドの交換ができる場所が確保できれば、排泄障害を抱える高齢者は外出できるようになるはずです。今後の高齢社会において、車椅子の使えるトイレの普及はノーマライゼーションの理念から推進されるはずです。

3.社会的サービスの活用、環境整備と道具の活用

本人と家族、そして地域の人々や在宅介護を支援する専門職(介護支援専門員、医師、看護師、理学療法士、作業療法士、介護職等)の連携で、生活力を取り戻すリハビリテーションは推進されます。自立に向けて、それぞれの高齢者のそれぞれの段階に合わせて、専門職の指導を受ける社会的サービスを活用してください。在宅介護の場合、環境整備には限界があると思いますが、ポータブルトイレ、車椅子、立ち上がりやつかまり立ちを助ける介助バー、そして、それらの道具が安全に使いこなせる、ベッドまわり、廊下、トイレの環境整備と工夫が必要になります。着脱しやすいように衣類を工夫することも大切です。失敗を補う紙パンツやパッドも自立排泄を後押しする道具のひとつです。