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下剤に頼らない排便ケア

下剤の効果と問題点

高齢者に多く見られる嵌入便(かんにゅうべん)

医療法人社団俊和会 寺田病院 神山剛一

高齢者に多く見られる排便障害に嵌入便というものがあります。

肛門の手前で固い便が貯まってしまい、自力で出すことができなくなった状態で、便意があっても訴えられない人や寝たきりの人などに多く見られます。

入院患者さんや施設に入所されている方が3

~4日排便が見られなければ、多くの場合、刺激性下剤の指示が出されるのではないでしょうか。

見かけ上排便が途絶えていても、嵌入便の方に同様の処置をした場合、大腸の動きに問題なければ下痢となり、肛門近くの便は停滞したままで、下剤によって生じた下痢がすき間をつたって肛門からもれ出てしまいます。

溢流性便失禁の状態で、絶え間なくだらだらと便がもれることになります。

私が大学病院時代、病棟から「便失禁」の往診依頼を受けることが時々ありましたが、その多くは、嵌入便の方に刺激性下剤を使ったことによる便失禁でした。

嵌入便は直腸の内診をすればすぐに判別できるので、何日か排便の見られない患者さんに対して、是非確認していただきたい行為の一つです。

マイナス~日で下剤を投与するという病棟や施設は多いと思います。その排便管理を全面的に否定しているのではありません。画一的な下剤の投与に警鐘を鳴らしたいのであって、下剤を用いて排便コントロールができていれば何ら問題ないのです。

下剤を使って下痢で困っていたり、便失禁に難渋する場合、下剤投与の基準になる考え方をお示ししたいと考えます。

神山 剛一

医療法人社団俊和会 寺田病院

外科,胃腸科,肛門科

専門分野

消化器外科

資格

医学博士、日本外科学会専門医、日本老年泌尿器科学会評議員など

略歴

1992年昭和大学医学部を卒業し、以降消化器外科医として直腸癌の外科治療に携わる。その過程において排便機能の重要性を認識し、術後の排便障害だけでなく、いわゆる便秘や便失禁の診断治療、さらにリハビリテーションや在宅医療の現場における排便コントロールに関しても積極的に取り組み、全国各地で啓発活動を行っている。2017年10月より現職。