下剤に頼らない排便ケア
下剤の効果と問題点
安房地域医療センター
房総健康管理センター
センター長
神山剛一
排便日誌と下剤の使用
この記事の概要
下剤の効果には個人差があり、種類だけでは判断できないことがあります。下剤の効果は便性状で評価します。排便日誌には、排便時間、便量、ブリストルスケール、下剤の種類・量・使用時間、腹部症状、失禁の有無を記録し、医療職との情報共有に役立てます。
では、下剤はどのように使えばよいのでしょうか。
下剤の使い方を考えるときには、「何日出ていないか」だけでなく、「どのような便が出ているか」を確認することが大切です。下剤には、便を軟らかくする薬、腸の動きを促す薬、腸管内への水分分泌などに作用する薬、直腸からの排出を助ける坐薬や浣腸など、さまざまな種類があります。近年では、酸化マグネシウムや刺激性下剤だけでなく、ポリエチレングリコール製剤、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバット、ナルデメジンなど、新しい作用をもつ薬も使われるようになっています。
ただし、どの薬を使う場合でも、排便回数だけで評価すると、下剤が本当に合っているかどうかは分かりません。便が硬ければ便を軟らかくする方向を検討しますが、その前に食事量、水分、食物繊維、活動量、排便姿勢なども確認します。一方、軟便や水様便が続く場合は、下剤が効きすぎている、薬の種類や量、使用間隔が合っていない、あるいは便が十分にたまっていなかった可能性も考えます。
その人に合った下剤の使い方を見つけるために役立つのが排便日誌です。排便日誌には、排便した時間、便の量、ブリストルスケールに基づく便性状を記録します。なお、便性状を記録する際は、出始めではなく、最終的に排出された便の性状を記録します。腸管内の状態は、最初に出た便よりも、最後に出た便の状態に反映されやすいからです。さらに、下剤を使用した場合は、何時に、どの薬を、どのくらい使用したかも記録します。可能であれば、食事量、水分摂取、腹部症状、失禁の有無、坐薬・浣腸・摘便の有無などもあわせて記録します。これを一定期間続けることで、下剤と排便の関係が見えやすくなります。
排便日誌サンプル
排便ケアをされている方の排便状態等をエクセルシートを用いて記録できる日誌です。
EAファーマ(株)、ユニ・チャーム(株)との共同開発、コンチネンスジャパン(株)西村かおる先生のご監修です。
アセスメントツールとして、日頃のケアにお役立てください。
たとえば、毎日下剤を使って毎日排便があっても、出ている便がブリストルスケールType 6や7の軟便・水様便であれば、よい状態とは言えません。この場合、「毎日出ているから成功」と考えるのではなく、下剤が効きすぎていないか、薬の量や種類、使用間隔を見直す必要があります。下剤による軟便や下痢は、便失禁や皮膚トラブル、介護負担の増加につながることもあります。
一方で、毎日下剤を使用しているにもかかわらず、週に数回しか排便がない場合もあります。この場合、すべての下剤が毎回有効に働いているとは限りません。特に刺激性下剤など作用時間が比較的はっきりしている薬では、内服や使用から排便までの時間を排便日誌で確認することが重要です。排便があった前日の薬は有効だった可能性がありますが、排便につながらなかった日の薬は、その人にとって不要であったり、使うタイミングが合っていなかったりする可能性があります。
ただし、近年使われているポリエチレングリコール製剤、ルビプロストン、リナクロチド、エロビキシバットなどは、便性状や排便リズムを整える目的で継続的に使用されることもあります。また、ナルデメジンはオピオイドによる便秘に対して使われる薬であり、背景にある薬剤の影響を考える必要があります。そのため、「出なかった日の薬はすべて無効」と単純に判断するのではなく、薬の種類、作用の仕方、便性状、腹部症状をあわせて評価することが大切です。
下剤の調整は、医師、看護師、薬剤師が本人の状態に応じて行います。介護スタッフが自己判断で薬の量や種類を変更することはできません。しかし、排便日誌に記録された情報は、薬剤調整にとって非常に重要です。「3日出ていません」だけでなく、「最終排便は3日前でType 1が少量、その後は腹部膨満があります」「下剤使用後にType 7が多量に出て、便失禁がありました」のように伝えることで、医療職は下剤の適否を判断しやすくなります。
いずれにしても、下剤の使用は「何日に1回は出す」という間隔だけを目標にするのではなく、本人が苦痛なく、できるだけ自然に近い形で排便できることを目指します。
ブリストルスケールではType 4を目標とし、Type 3〜5で本人の苦痛が少なく、生活上の支障が少なければ、おおむね安定した状態と考えます。排便日誌を活用し、便性状、排便間隔、下剤の使用状況を多職種で共有しながら、その人に合った排便ケアを組み立てていきましょう。
POINT 排便日誌と下剤の使用
- 下剤は排便回数だけでなく、便性状を見て評価する
- 排便日誌には、排便時間、便量、ブリストルスケール、下剤の使用時間・種類・量を記録する
- 可能であれば、食事量、水分、腹部症状、失禁、坐薬・浣腸・摘便の有無も記録する
- Type 6〜7の軟便や水様便は、下剤が効きすぎている可能性を考える
- 刺激性下剤では、使用から排便までの時間を確認する
- 新しい薬剤では、薬ごとの作用や継続使用の目的も考慮する
- 薬剤調整は医療職が行い、介護スタッフは排便日誌を通じて情報を共有する
- 目標はType 4、許容範囲はType 3〜5を目安にする
update : 2026.09.04