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  2. “夜間のおむつ交換”を減らし、ご入居者様のQOL向上を実現するまでの挑戦

今回お話をうかがったのは、全国に有料老人ホームを展開しているベネッセスタイルケアの西日本・東海エリアの皆さんです。夜間のおむつ交換を減らし、ご入居者様のQOLが大幅に改善した排泄ケアの取組みと、その活動を全国のホームに浸透させた秘訣をうかがいました。

西日本Ⅰ・東海・福岡エリア事業本部
安達本部長

メディカルホームグランダあやめ池・奈良介護スタッフ
石飛さん・山田さん・加藤さん

排泄ケアコーディネーター
平田

1. 大手法人で現場を変革するリーダーに聞いた!
3つの極意

「こまめなおむつ交換」が生み出した問題

安達本部長:私たちベネッセスタイルケアグループは、「その方らしさに、深く寄りそう。」という理念のもと、ご入居者様お一人おひとりに快適にお過ごしいただくためのケアを常に考えてきました。おむつ交換は「こまめにして差し上げることが良い」と、夜間帯を含めて何度も交換することを大切にしていました。


一方で、ご入居者様の中には日中はウトウトと眠そうで食欲がない方や、夜間眠れず起き出される方もいらっしゃるなど、生活リズムの乱れによるQOLの低下が見受けられました。さらに、おむつ交換を何度もすることでスタッフの負担も大きく、疲労感や「ケアに対する達成感が得られない」という声も聞かれていました。


そのような実態を見て、「何か解決方法はないのだろうか」と考えるようになり、ユニ・チャームの平田さんに相談しました。

夜間帯のおむつ交換を減らしたらご入居者様が変わった!

安達本部長:平田さんは、ご入居者様にとって夜間良眠が本当に大事であること、そして、最新の高機能パッドやおしり洗浄液の機能を活かせば、ご入居者様の快適性を損なうことなく、夜間帯のおむつ交換の回数を減らせると助言してくれました。


お一人おひとりの尿量を測定しパッドを選定する等のアセスメントを実施し、その方の状況に応じておむつの交換回数の見直しを実施しました。実際に夜間帯のおむつ交換を減らしたところ、ご入居者様の睡眠の質が向上し、日中の活動性も大幅に改善した方が多く、なかにはADLの自立度が大幅に改善した方もいらっしゃいます。夜間帯のおむつ交換がいかにご入居者様の睡眠の妨げになっていたのかを、あらためて痛感しました。

ご入居者様の生活全体のQOLの高まりをもう少し詳しくお話すると、笑顔や会話が増えたり、食事がしっかり摂れるようになったことで、BMIが改善した方が複数いらっしゃいました。


さらに、夜中の中途覚醒をなくせたことで、夜間帯の転倒事故のリスクを減らすことにもつながりました。

※イメージ

スタッフにも大きな変化が!

これらのご入居者様の目覚ましい変化は、スタッフのモチベーションとなりました。


ユニ・チャームの方に講師として来ていただいた研修にも意欲的に参加し、アセスメント力にさらに磨きがかかりました。また、夜間のおむつ交換回数が少なくなったことにより、腰痛が減ったなど労務環境も改善し、「ご入居者様にもっと良いケアをして差し上げたい!」と前向きな活動が増えていきました。このように効果は多方面に及び、これらのエビデンスを基に、現在は夜間良眠ケアを全国のホームで開始しています。

多くのスタッフの心を動かす3つの極意

安達本部長:大勢のスタッフが想いをひとつにして取り組むためには、ベクトルあわせが必要です。それを可能にするために、重要なことの一つ目が、エビデンスです。エビデンスがあれば、皆がそれを信じて同じ方向に進むことができます。


二つ目は、スタッフが成果を発表し共有できる場を設け、互いに学び合い称賛し合うことです。


三つ目は、排泄ケアファシリテーターとしての役割を作ったことです。ファシリテーターは、自分のホームの排泄ケアの見直しを推進して良い方向へ変えていくだけでなく、他のホームにも指導者として出向き自ホームの成功事例を伝えるという取組みも始めました。

ベネッセスタイルケア様とユニ・チャームは、夜間良眠を実現した排泄ケアの取り組みを第31回日本老年泌尿器科学会(2018年)で発表しました。現在では同グループ300以上のホームで夜間良眠のための排泄ケアに取り組んでいます。

2. ご入居者様のために!
“夜間のおむつ交換”の見直しでケア革新
~メディカルホームグランダあやめ池・奈良の取り組み~

昼もウトウト…心配するご家族からいただいた気づき

加藤さん:ユニ・チャーム様から「夜間良眠していただくためには、おむつ交換回数の削減を」と提案されましたが、最初は非常に抵抗がありました。スタッフが楽になるだけなんじゃないか……そんなうしろめたさを感じていたからです。

そんなとき、面会にいらっしゃったご家族が、ご入居者様がウトウトして会話もあまりなされない姿を心配されている光景を目の当たりにし、ハッとしました。夜中におむつを交換するということは、睡眠が中断されて、その分よく眠れていないということです。

当たり前のことですが、眠たいことがどれだけしんどいことか、自分の身に置き換えるとよくわかります。今までやってきたことは、本当にご入居者様にとって良いケアだったのだろうか……ご入居者様のお力になりたい一心で取り組んできたケアにふと不安が生じたのです。

「正しい知識」と「考える習慣」が排泄ケアを変えた

加藤さん:夜間のおむつ交換削減に取り組み始めたときは、疑問だらけでした。でもユニ・チャーム様は、夜間帯のおむつ交換を減らすことによって得られる効果と、なぜ減らすことができるのかというその根拠を必ず示してくれました。


一晩中安心さらさらパッドSkin Condition」の仕組みや、長時間つけていてもスキントラブルになりにくい理由、実際に商品を用いた実験などを通じて、尿戻りしない快適な感触などもスタッフが体験しました。おむつ交換の回数を減らしてもスキントラブルを起こさないためには、おしり周りの清潔ケアも鍵になることを教えてもらいました。

おしり洗浄液Neo」を使って、清潔ケアのやり方を研修でレクチャーしていただくなど、部分ケアにとどまらない幅広い知識とスキルを身につけることができました。そのおかげで、スタッフみんなが納得したうえで、「やってみよう!」と前向きに取り組めるようになりましたね。


開始当初は、不安のあまり隠れて夜間帯のおむつ交換に入ってしまうスタッフもいたようです。理由は、「交換しないとモレてしまうから」でした。しかし、使用後のパッドの濡れ方を分析したところ、尿量ではなく、おむつのあて方の問題だと気づき、解決できました。 今では、スタッフみんなのアセスメント力が上がり、考えるケアを実施できるようになりました。


ケアコーディネーター 平田:スタッフの誰もが“ご入居様のために”というご本人目線で、「もっと良いケアができないか」と志向されるところがベネッセ様の素晴らしいところです。これからもそんなお気持ちに寄り添いながら、サポートできればと思います!

3. ご入居者様の変化が
スタッフに自信と感動をもたらした!

変わられたご入居者様の姿にびっくり

石飛さん:あるご入居者様は、日中も今までずっと目を閉じて過ごされていて、食事の際に何度も大きい声でお声がけしてもほとんど反応されず、食事もあまり召し上がりませんでした。しかし、取り組みを始めてからはすっきりと覚醒され、食事も8~9割程は摂れるようになり、ご家族もとても喜ばれました。


山田さん:ほとんど話されることがなかったあるご入居者様は、本当におしゃべりなくらいよく話されるようになられて(笑)。それまではあまり手も動かされなかったのですが、自分で歯磨きもするから貸してって自ら手を伸ばされるようになりました。


加藤さん:自分たちのケアでご入居者様が元気になられていくことで、ケアに対する自信がついていきました。夜にぐっすり眠って、昼間に元気に過ごす。これが、人間らしく生きる原点なのだなと改めて感じました。

そして何より、ご家族が「本当に元気になった」と喜ばれている様子に感動しました。

残業時間も腰痛も改善!? 活気あふれる施設の今

加藤さん:スタッフに余裕がないと、あせっている姿をご入居者様に見せてしまうことがあります。すると、ご入居者様も不安になる。ゆとりのなさが、悪循環を招いているんだなあ……ということにあらためて気づかせてもらいました。


夜間帯のおむつ交換削減は、スタッフの腰痛が減るなど体調面のメリットもありました。削減によって生まれた時間でご入居者様お一人おひとりと関わる時間が増え、それに、なんと残業時間の削減にもつながりました! ホーム全体の雰囲気が明るくなり、活気にあふれています。

【今回の取材先】ベネッセスタイルケア

ベネッセスタイルケアでは、介護付有料老人ホーム・住宅型有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類の高齢者向け施設を全国で300カ所以上運営しています。これらの運営を通して、年をとっても、QOL(Quality Of Life)の高い暮らしを実現していただくためのお手伝いをしています。

今回の取材はアリア嵯峨嵐山にて実施させていただきました。