排泄ケア研究発表
夜間の排泄ケアを見直すことで睡眠状態の改善を図る「引き算」の排泄ケア
今回ご紹介するのは、株式会社ベネッセスタイルケア様との共同研究の成果で、「夜間のパッド交換見直しが睡眠状態および意欲・ADLに与える影響 - 大規模データに基づく効果検証 ー」に関するレポートになります。
対象者の選定方法
各ホームで、夜間に定時のパッド交換を行っている方(特に夜間の睡眠に何らかの困難を抱えている方)の中から、説明の上同意が得られた方を選定。
分析対象
2018年6月1日から2019年2月15日の間に事前評価および3ヵ月評価が終了した549名。
分析方法
取り組み前と取り組み開始から3ヵ月後の対象者の状態を、以下の指標に基づいて評価し、比較。
- 睡眠状態:アテネ不眠尺度
- 意欲:バイタリティインデックス
- ADL:バーセルインデックス
※アテネ不眠尺度
世界保健機関(WHO)が中心になり設立した「睡眠と健康に関する世界プロジェクト」が作成した世界共通の不眠症の判定方法。本来はご本人の主観に基づき評価を行うが、今回の取り組みでは、ご自身で回答できない方については職員による客観評価にて代替。職員の評価と実際の睡眠状態の乖離がないかどうかは、一部の対象者についてパラマウントベッド株式会社の「眠りSCAN」を用いた検証を実施。
※バイタリティインデックス
鳥羽 研二氏らによって開発された、日常生活動作に関連した「意欲」についての客観的評価指標。
※バーセルインデックス
日常生活動作(ADL)の評価指標の1つ。要介護認定の際にも使われる。
「夜間ぐっすり排泄ケア」実践の結果
ご入居者の変化
取り組み開始から3ヶ月で、睡眠状態については71.2%、意欲については39.7%、ADLについては23.5%の対象者において改善傾向が見られました。
夜間眠れることで日中の覚醒状態が大きく改善。下記のような変化が見られた方も多くいらっしゃいました。
職員の声
- おむつ交換のときに協力してくださるようになった
- お食事量が増えた
- 食事をご自分で召し上がるようになった
- 笑顔が増えた
- 夜間の転倒回数が減った
職員の変化
たとえば、2017年株式会社ベネッセスタイルケア様の有料老人ホーム「まどか茨木」で取り組んだ際には、今までの「当たり前」を変えることに最初は職員みんな懐疑的でした。しかし、さまざまなアプローチで意義や成功事例を共有することで、取り組みが施設全体に広がっていきました。ご入居者の変化はもちろん、職員自身も夜勤明けでも表情が明るくなり、体調が改善した職員もいるなど、ポジティブな連鎖が生まれました。さらに職員に時間と余裕ができたことで、お一人おひとりのご入居者のケアをより深く考え、積極的に話し合う環境ができました。
次は、あなたの施設でも