排泄ケアを考える

福山友愛病院 末丸修三先生の【認知症高齢者の生活機能改善への取り組み】

ユニ・チャーム排泄ケア研究所

医療法人紘友会 福山友愛病院

2006年5月13日、松山市で開催されたユニ・チャーム主催の「愛媛県ライフリー排泄ケア・フォーラム」には約300名の医師・看護師・介護職の方々が参加されました。このフォーラムで、福山友愛病院(精神科)副院長の 末丸 修三 先生が、「ラップによる褥瘡局所治療法」と「アウトドアで行うアクティビテイケア・プログラムの認知症高齢者における意欲および生活の質(QOL)に及ぼす効果――自立排泄支援を併せた複合ケア介入の評価――」の2つの演題で講演されました。

末丸先生とは、2000年1月に広島で開催した「全国縦断排泄ケアセミナー」(“ぼけ予防協会”共催)以来のお付き合いで、その発表会の基調講演を先生にお願いし、先生は「アウトドアでのアクティビティケアが認知症高齢者の機能不全行動(行動障害)の減少と感染防御能の増強をもたらすこと」を発表され、私がユニ・チャームの自立排泄支援の考え方についてお話をしました。この時、先生はご自分のテーマと自立排泄支援を複合させた新たな研究テーマを思いつかれました。今回講演された「自立排泄支援を併せた複合ケア介入の評価」は、この時の発想を実践された結果の報告でした。この研究は、「青空緑芝アウトドア・アクティビティケア・プログラムの認知症高齢者における意欲および生活の質(QOL)に及ぼす効果――積極的自立排泄支援を併せた複合ケア介入の評価――」のタイトルで、2000年12月に第一回日本認知症ケア学会で発表され、2003年3月同学会誌に論文が掲載されました。

この研究論文に、リハビリパンツとパッドが自立排泄支援のツールとして登場します。『排泄用具は個人のADLレベルに応じたものを選択した。なかでも紙おむつは、ユニ・チャーム(株)により最近新たに開発されたライフリー“リハビリパンツ”“かんたん装着パッド”“心とお肌のケアパッド”のなかから、比較的簡単に下着感覚で着用できるものを適切に選択して用いた。』とあります。また、考察のなかで『とくに、新たに創意工夫、開発され進化したリハビリパンツやパッドを上手に選択して用いることによって、むしろ、紙おむつの交換回数を減らし、トイレ誘導・ポータブルトイレ誘導も併せると、「紙おむつを使用することにより、逆説的に紙おむつから離脱する」ことが可能になる、すなわち自立排泄に向かいQOLが向上するものと考え、実践した。』と述べられています。そして、リハビリパンツとパッドを使ったトイレ誘導を主体とした自立排泄支援活動によって、『20名中10名において排泄能力の“自立”ないし“軽度の介助を要するレベル”への改善が認められた。』と報告しています。おむつ(リハビリパンツ)を使って、逆説的に、おむつ(テープ止め)からの離脱(排泄の自立)を達成する、というユニ・チャームの排泄ケア理論の有効性が、エビデンスをもって実証されています。そして、この研究の結論として、『アクティビティケア単独のプログラムが「QOL-D総合スコア《認知症高齢者の生活の質尺度》」に有意な変化をもたらさなかったのに対し、自立排泄支援による複合ケア介入がQOL-D総合スコアの有意な上昇をもたらした。――略―― 排泄能力が改善すると「VI:Vitality Index《認知症高齢者の意欲の指標》」も高まることが示された。――略―― “排泄能力非改善群”ではQOL-D総合スコアもVIスコアも統計学的に有意な変化を示さなかったが、“排泄能力改善群”では双方とも有意に上昇した。』と述べ、結語として『複合ケア介入は、認知機能はもとより、ADL特に排泄能力を改善するとともに、意欲とQOLの双方のレベルを高めることから、認知症高齢者の包括的な生活機能の改善に有用な手段であることが示唆された。』とまとめられています。

この研究の成果をわかりやすくまとめると、「アクティビティケア・プログラム単独では、認知機能やADLを改善することはできたが、QOLや生活意欲を高めることまではできなかった。しかし、アクティビティケアに自立排泄支援を組み合わせたプログラムで、排泄の自立が獲得できたケースにおいては、認知機能・ADLの改善だけでなく、QOLと生活意欲まで高めることができた。」ということになります。「排泄の自立」がQOLと生活意欲において、決定的な影響因子であることが、改めて証明されたことになります。そして、最後に「認知症高齢者の生活の質尺度(QOL-D)」を開発された全国高齢者ケア協会理事長の鎌田ケイ子先生と、「高齢者の意欲を客観的に測定する意欲の指標(VI)」を開発された杏林大学高齢医学教授の鳥羽研二先生に謝辞を述べられ、『および、ご協力いただきましたユニ・チャーム(株)に深謝するものである。』と付け加えられています。末丸先生は、ご自分の研究テーマ「認知症高齢者の機能回復」にユニ・チャームが自立排泄支援の概念を提供してくれたと、私たちにも敬意を示してくださいました。

  • 当時使われていた「痴呆」という表現はすべて「認知症」に改めました。

寄稿:船津 良夫(1998年~2017年 ユニ・チャーム排泄ケア研究所 主席研究員)

医学博士 末丸 修三

医療法人紘友会 福山友愛病院 副院長
福山友愛病院附属精神神経医学研究所 所長
精神神経内分泌免疫学研究部門長
老年精神医学・認知症介護研究部門長