排尿ケアの技術

尿失禁を減らすケア

現状を把握し、適切なケアをすることが、尿失禁を減らすことにつながります。
排泄の観察や排尿日誌の記録をもとに、下の表で尿失禁の状態をチェックし、対処の工夫を考えましょう。

(1)自立排泄できる確率、失禁してしまう比率

現状把握
  • 排尿日誌に、自立排泄と失禁の記録をとる
アセスメントと対処
  • 失禁に目を向けるのではなく、成功の状況を観察する(いつ、どこで、どんな様子で、成功したかを分析する)
  • うまくできたことを本人とともに喜び、成功体験を積み上げていくよう配慮する
  • ADLに応じて、自立排泄のためのケアを検討する(トイレ誘導、ポータブルトイレ誘導、尿器介助)

(2)排尿回数、排尿間隔、最長排尿間隔

現状把握
  • 排尿日誌の記録から計算する
  • 排尿間隔の変動を把握する
  • 1時間未満で排尿することが多い(頻尿)か、2時間以上間隔が空くことがあるのかを、把握する
参考(値)
頻尿の目安:
昼間(朝起きてから夜寝るまで)に8回以上
夜間(夜寝てから朝起きるまで)に2回以上
残尿の目安:
残尿50cc以上は要注意
残尿100cc以上は要診療
アセスメントと対処
  • 最長排尿間隔を基準に、時間を決めたトイレ・ポータブルトイレ誘導を行なう
  • 尿意があれば、我慢して排尿間隔を延ばす「膀胱トレーニング」を行なう
  • 生活のリズムに合わせた排尿習慣を訓練していく
  • 泌尿器科で検診。医師に相談し、残尿を測定する。膀胱炎等尿路感染症の検査を受ける

(3)排尿量、最大排尿量

現状把握
  • 排尿日誌の記録から、最少排尿量、最大排尿量、時間帯別の平均排尿量を把握する
  • 最大排尿量から膀胱容量を推測する
参考(値)
多尿の目安:
1日尿量(cc)=体重(kg)×40cc以上(男性2400cc以上、女性2000cc以上)
夜間多尿の目安:
一晩の尿量(cc)=体重(kg)×10cc以上(1日尿量の33%以上)
アセスメントと対処
  • 排尿間隔、排尿量に合わせて、充分な吸収力を備えたパッドを選択する
  • 時間帯別にパッドを使い分けることを検討する
  • 最大排尿量と最長排尿間隔を、本人に伝え、ここまで我慢できる能力があることを確認し、自信を持ってもらうように働きかける

(4)尿意の有無

現状把握
  • 尿意の有無、介護者への伝達能力を確認する
  • 尿意による初期動作(排尿信号)を観察する
アセスメントと対処
  • 言葉以外のコミュニケーション、例えば、鈴を鳴らしてもらう、メモに書いてもらう等の伝達方法を試してみる
  • 尿意をもよおした時に起きる決まった行動・動作を把握し、トイレ誘導を行なう

(5)1日の排尿量と水分摂取量の比較

現状把握
  • 排尿日誌の記録から、1日の排尿量の合計と水分摂取量の合計を計算する
参考(値)
水分摂取の目安:
夜間多尿で、1日の水分摂取(食事に含まれる水分は除く)が2000cc以上は要調整
アセスメントと対処
  • 1日の水分摂取は、500~1200ccを確保する
  • 夜間多尿、夜間頻尿の場合は、水分摂取の時間を調整する(例えば、午前中に800cc、午後は400cc、夕食後は制限する等)。どうしても夜間に喉が渇くようであれば、氷をなめてもらうことで対応する
  • 塩分を制限する(1日10g未満)

(6)尿が出にくい、残尿感がある

現状把握
  • 排尿の様子を観察する
  • 残尿感を確認する
参考(値)
尿排出障害の目安:
排尿開始までに時間がかかる
排尿開始から終了までの時間が30秒以上かかるようなら要注意
アセスメントと対処
  • 医師に相談し治療を受ける(尿排出障害が疑われる)

(7)尿に濁り、悪臭がある

現状把握
  • 使用後のおむつ、パッドをチェックする
  • 排尿時の痛みや残尿感を確認する
アセスメントと対処
  • 医師に相談し治療を受ける(尿路感染症が疑われる)

(8)投薬の影響

現状把握
  • 服用している薬を確認する
参考(値)
風邪薬:
尿がでにくくなる
パーキンソン薬、抗コリン薬、抗アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬、向精神薬:
膀胱の活動が抑えられる
利尿薬、降圧薬:
蓄尿しにくくなる
アセスメントと対処
  • 医師に相談する

(9)排泄行動のプロセス

現状把握
  • 尿意を感じてから、排泄を終え、後片付けを済ますまでの行動を観察する
アセスメントと対処
  • できてしていること、できるのにしていないこと、できないことを、それぞれの動作ごとに分類し、残存の能力を活かした、排泄ケアを計画する
  • それぞれの動作の場面ごとに、本人の生活意欲を高め、プライバシーを尊重した排泄ケアを計画する
  • 対処には、家でできることと、医療的なものがあるので、「アセスメントと対処」の項目に「医師と相談、治療」とある場合は専門家に相談しましょう。