排便ケアの実践

生活習慣の改善による排便ケア

排便日誌を活用した専門職の連携

ユニ・チャーム排泄ケア研究所

排便日誌は排便ケアのアセスメントツール

排便ケアを推進する上で、排便日誌は極めて重要な記録であるとともに、ケアカンファレスにおける重要な分析の根拠となります。

まず、排便日誌から、INとOUTの相関を見ることができます。

食事の時間、摂取量、内容、状況、そして水分摂取の時間と量、また下剤の種類、量、投与時間、その他全身疾患の治療のための投薬の記録も重要です。薬理作用による排便障害も念頭におく必要があります。特に、自律神経に影響する薬物は、消化吸収や腸管の蠕動運動に影響を与えます。

そして、OUTの記録です。排便の周期、排便の時間、便の量、便の性状、便失禁の有無です。特に大切なのは便の性状です。排便コントロールは、便の性状コントロールであるべきです。高齢者の排便周期には個人差が大きいといわれています。便のもとになる食事量や繊維質が減少すれば、便の生成も減り、排便回数も減少します。1週間に1度の排便でも、膨満感や腹痛の不快感を伴わず、有形の普通便が定期的に排便されていれば、便秘の処方は必要ないケースもあります。3~4日間排便がないと、出すことが優先され、一律に刺激性下剤が投与され、泥状便や水様便でも、排便がないよりはマシというケアに問題があります。健康な排便は、形のある便を出すことです。

「ブリストルの便性スケール」は国際的に使われている便の性状を計るものさしです。コロコロ便から水様便までの便の性状を7段階に分類しています。4の普通便、3のやや柔らかい便、5のやや硬い便を普通便の範囲と考えることができます。排便日誌には、ブリストールの便性スケールの番号を記録することで、介護者の主観的な判断を除き、客観的に便の性状を職員間で共有できます。

例えば、毎日定期的に刺激性下剤を投与しているが5日間隔でしか排便がないというケースがあったとします。刺激性下剤は投与から6~12時間で作用します。そして24時間以上持続して作用することはないといわれています。それぞれの利用者の下剤投与時間から排便時間を予測することができます。また、排便のあった日の前日に投与した刺激性下剤は有効であったが、それ以前の何日間に投与した刺激性下剤は24時間しても作用しなかったのですから、無効だったことになります。無効だった下剤は投与を中止できます。また、下剤を投与した後、頻回に水様便が出るというケースは、刺激性下剤の量が多かったことが考えられます。
下剤投与と排便を比較することで、24時間以上作用しなかった下剤の投与回数を減らす、便の回数と性状から下剤の量を減らすことができます。下剤は、第1に回数を減らす、第2に量を減らすことで段階的に減らしていくことができます。

排便日誌にはINとOUTの記録だけでなく、それぞれの利用者別に排便ケアの短期目標を記載し、そのために実施した排便ケアプログラムの実施状況やその結果を、体調や生活の変化として評価する必要があります。排便日誌は職員間で情報を共有するためのツールであるだけでなく、食事の見直し、下剤の見直し、生活の見直しに役立つツールです、それぞれの利用者の生活に即した排便の目標を設定し、職種間の壁を乗り越え、専門職が協力して排便ケアを推進していくための重要なアセスメントツールといえます。

排便日誌のポイント

おわりに

3~4日間排便がないと出さなければと考え、刺激性下剤を日常的、定期的、画一的に投与する、排便周期にもとづく排便コントロールを見直していくべきです。それぞれの利用者の排便周期を把握すること、そして便の性状をもとに、「形のある便」の排便を目指すケアを推進していくべきだと考えます。
そのためには排便日誌がケアを分析する基礎になります。そして、排便日誌を根拠に、ケアカンファレンスを通して、医療と介護が連携をとっていくチームアプローチが形成されていきます。下剤の処方を指示するドクターは利用者のおむつを交換していません。
おむつ交換に携わり、利用者の排便状況を掌握しているのは介護職です。介護職が、言葉を失った利用者や十分なコミュニケーションができなくなった利用者に代わって、便秘や下痢、便失禁の苦痛をきちんと看護師、ドクターに伝え、排便ケアの見直しを推進するリーダーシップを発揮していかなければ、利用者は救われません。
排便日誌をエビデンスに、利用者の生活に寄り添う介護職が中心となって、他の専門職を動かしていくことで、初めて利用者本位の介護現場が実現できるのだと思います。

ユニ・チャーム排泄ケア研究所

全国の施設・病院で排泄ケアの実態を調査しながら製品開発検証、紙パンツを使ったトイレ誘導・自立排泄支援の普及活動を展開。一般市民向けの介護予防教室、在宅介護に携わる専門職や家族介護者向けのおむつ教室も開催。

制作コンテンツ

寄稿:船津 良夫(1998年~2017年 ユニ・チャーム排泄ケア研究所 主席研究員)