下剤に頼らない排便ケア
排便コントロールのアプローチ
安房地域医療センター
房総健康管理センター
センター長
神山剛一
アセスメントのための考え方
この記事の概要
排便ケアは、便の材料となる「インプット」、便が腸を通る「トランジット」、直腸から排出する「アウトレット」の3つのプロセスから成り立つと考えると整理しやすくなります。それぞれは別々の過程ですが、問題は重複することもあります。この3つを把握することで、より有効な対処法の導入に役立ちます。
排便日誌では、排便の有無、便の量や性状、下剤の使用状況などを記録します。しかし、排便コントロールを考えるときには、記録された便の状態だけでなく、食事量、活動量、排便姿勢、生活リズム、全身状態などもあわせて見る必要があります。とはいえ、確認する項目が多すぎると、何をどう評価すればよいのか分かりにくくなってしまいます。
そこで排便ケアでは、排便に関わる要素を「インプット」「トランジット」「アウトレット」の3つに分けて考えると整理しやすくなります。インプットは、食事や水分、食物繊維など、便の材料となるものが十分に入っているかを見る視点です。食事量が少なければ、つくられる便の量も少なくなり、排便間隔が空くことがあります。この場合、便が出ないからといってすぐに下剤を使うのではなく、まず食べられているか、便の材料が足りているかを確認することが大切です。
トランジットは、つくられた便が大腸を通って直腸まで運ばれる過程を見る視点です。腸の動きが低下していたり、活動量が少なかったり、薬剤や全身疾患の影響があったりすると、便の通過に時間がかかり、硬い便になりやすくなります。一方で、下剤が効きすぎたり、腸管の通過が速すぎたりすると、軟便や水様便になることがあります。ブリストルスケールを用いて便性状を確認すると、便がどのような状態で腸を通過してきたのかを推測しやすくなります。
アウトレットは、直腸に届いた便をためて、適切なタイミングで排出できているかを見る視点です。便が直腸まで来ていても、便意を感じにくい、座位姿勢がとれない、腹圧をかけにくい、肛門周囲の筋肉をうまくゆるめられないといった理由で、排便が難しくなることがあります。また、直腸に便が残ったままになると、残便感や頻回のトイレ希望、便失禁につながることもあります。排便時の姿勢、トイレ誘導のタイミング、座位保持、便意の有無などを確認することが重要です。
このように、排便障がいをアセスメントするときは、「何日出ていないか」だけで判断するのではなく、便がつくられているか、腸を通って運ばれているか、直腸・肛門から出せているかを順に見ていきます。たとえば、食事量が少なく便が作られていない人と、便は直腸まで来ているのに出せない人では、必要なケアは異なります。前者では食事量や食物繊維の見直しが重要になり、後者では排便姿勢やトイレ誘導、必要に応じた坐薬・浣腸などの検討が必要になります。
排便日誌は、この3つの視点で情報を整理するための大切な手がかりになります。食事量、水分摂取、活動量、下剤の使用、排便時間、便量、便性状、失禁の有無、腹部症状などをあわせて見ることで、その方の排便の特徴が見えてきます。介護スタッフが日々の観察を記録し、看護師、医師、薬剤師、リハビリ職、栄養士などと共有することで、一人ひとりに合った排便ケアを組み立てやすくなります。
POINT アセスメントのための考え方
- 排便ケアは、インプット、トランジット、アウトレットの3つに分けて考える
- インプットでは、食事量、水分、食物繊維など、便の材料が足りているかを見る
- トランジットでは、便が腸を通る時間や、便性状、活動量、薬剤の影響を見る
- アウトレットでは、便意、排便姿勢、座位保持、直腸から出せているかを見る
- 「何日出ていないか」だけでなく、「どこで滞っているのか」を考える
- 排便日誌を使い、3つの視点で情報を整理して多職種で共有する
update : 2026.09.04