排泄ケアの考え方

排泄ケアは介護の基本

人が身体的に成長して成熟し、やがて衰えていくというのは、自然の流れです。
また、人間の生活動作は2足歩行が基本です。
そのため膀胱や内臓を支える骨盤底に長い年月を通して大きな負担がかかります。
この骨盤底の衰えも失禁の一因で、加齢とともに失禁しやすくなります。
失禁は、年齢を重ねれば、誰にでも起こる自然な衰退の現象と受け止め、高齢者の排泄障害を、さりげなく受け止めていくケアを心がけていきましょう。

人間の一生を見ると、ADL(日常生活動作能力)は成長とともに発達し、やがて衰えていく。

人間としての尊厳に関するケア

日常の生活動作能力(ADL)が、生まれてから成長するにつれ発達し、加齢によって徐々に衰える、というのは自然な流れです。そうはいっても、失禁するようになった自分を認めたくない心理は、誰にでもあるものです。
「失禁を人に知られたくない」「おむつをするのはつらい」「自分で処理したい」……そうした高齢者の本音は、おむつを拒否して外す、汚した下着やおむつを隠す、暴言で介護者にあたるなどの行動となって表われることがあります。

介護者は問題行動にとらわれるのではなく、その裏に潜む本音をくみ取りましょう。むやみに行動を制限したりせず、言葉のかけ方に配慮しながら、自尊心を尊重したケアができるように心がけたいものです。
また、適切な用具を選ぶことが、より快適なケアにつながることもあります。心理的なケアに加えて、技術的なケアを合わせて考慮することが大切です。

排泄ケアは介護の原点

失禁の原因は、妊娠・出産や薬の副作用、既往症の二次障害、加齢に伴う生理的機能の低下などさまざまで、多くの人が経験する可能性があるものです。しかし、排泄は羞恥心を伴うプライベートな行為なだけに、排泄障害を起こすと、社会活動への参加意欲が低下したり、自らの存在価値を否定したりするようになりがちです。

自立した日常生活を送るうえで、排泄のコントロールは不可欠なもの。排泄の支援は、生活全般の支援にもつながります。施設などの介護の現場では、「排泄最優先の原則」をスローガンにケアが実践されています。それは、食事や入浴と違って排泄は待ったがきかない生理現象であり、また排泄の失敗は、その方の生活意欲に大きなダメージを与えがちだからです。
適切なタイミングでのケアが提供できなければ、高齢者に尊厳のある生活を過ごしていただくことができなくなってしまいます。

障害の進行に合わせた段階的ケアの必要性

障害が進んでも、言葉かけや、うまくできたことを一緒に喜ぶ姿勢を持ち続けることが、本人の意欲へとつながります。

1回の成功を一緒に喜ぶ姿勢が大切

排泄機能の障害は、段階的に進行していきます。
高齢者に声をかけたり同行してあげれば自分でトイレに行って排泄できる段階から、10回のうち1回失敗したり、やがて9回失敗するような状態になるかもしれません。
しかし、そうなっても9回の失敗を責めるのではなく、1回の成功を喜び合う姿勢は最後まで必要です。たとえおむつが必要になったとしても、この1回の成功のために、トイレやポータブルトイレへ誘導する、あるいはトイレやポータブルトイレでおむつ替えをするケアは、本人の生活意欲に大きな影響を与えるからです。
便座に座ることもなく寝た姿勢のままで、いつもおむつに排泄するような生活に、高齢者は人間らしさまで失ってしまいかねません。

ケアの段階と障害に合わせたケアの表 加齢に伴い障害は重度化していきがちです。自立排泄をめざした段階的目標設定が必要です。 [自立の段階]1.排泄見守り 2.排泄支援(言葉かけ、同行) [一部介助の段階]3.トイレ誘導(時間を見計らって) 4.ポータブルトイレ誘導(時間を見計らって) 5.尿器・便器介助(時間を見計らって) [全介助の段階]6.トイレで立っておむつ交換 7.ポータブルトイレで座っておむつ交換 8.ベッドで寝た姿勢でおむつ交換

  • 障害の進行を段階的にとらえ、昼と夜の違い、尿のトラブルと便のトラブルの違い、その人の価値観や状況・現象などを、よく観察して分析し、ケアの目標を立てていくことが大切です。
  • 高齢者の場合、自立から一部介助へ、一部介助から全介助へと障害の程度は進行しがちです。ケアの目標は、逆に少しでも自立へ近づく方向に向けておきたいものです。ベッドで寝た姿勢でのおむつ交換から、座って・立ってのおむつ交換へ、ポータブルトイレ誘導からトイレ誘導へと、高齢者と介護者が意欲的に挑戦していく 前向きな姿勢と努力が必要です。